アパート経営をしていると、外壁塗装、防水工事、原状回復、設備交換など、さまざまな修繕工事が発生します。
その際、
「いつも依頼している業者さんだから」
「何社にも連絡するのは面倒だから」
という理由で、最初の見積もりだけで工事を決めたくなることがあります。
反対に、複数の見積もりを取って、一番安い業者さんへ依頼すればよいと考えることもあります。
しかし私自身、約450万円の階段交換見積をきっかけに、相見積もりは単なる価格比較ではないと学びました。
今回は、複数の業者さんへ相談して分かった、修繕内容と業者選びの考え方をお伝えします。
大家になった頃は業者さんの提案を信じていた
大家になった当初は修繕の知識がなく、業者さんから提示された工事が最善だと思っていました。
見積書を受け取っても、何を比較すればよいのか分かりません。
そのため、管理会社さんや業者さんから提案された内容を、そのまま依頼することもありました。
しかし、大家業を続ける中で、同じ建物を見ても業者さんによって診断や工事方法が大きく異なることを知りました。
450万円の階段交換見積がきっかけだった
ある物件で、共用階段のサビが進行していることが分かりました。
私の物件は海から約1kmの場所にあり、塩害の影響も考えられました。
共用階段は入居者様が毎日利用するため、安全性に関わります。
最初に相談した業者さんからは、
「階段をすべて交換した方がよい」
という提案を受けました。
見積金額は約450万円です。
安全のために必要な工事だと言われれば、簡単に断ることはできません。
一方で、大家にとって450万円は、すぐに決められる金額ではありませんでした。
そこで、ほかの業者さんにも現場を確認していただくことにしました。
業者によって提案内容が大きく違った
複数の業者さんへ相談すると、金額だけでなく工事方法そのものが異なりました。
階段全体の交換を提案した業者
階段をすべて交換する提案です。
安全性を重視した内容でしたが、工事費も高額になりました。
傷んだ部分の補強を提案した業者
階段全体を交換せず、傷んだ部分を補修・補強する提案です。
必要な強度を確認しながら、費用を抑える考え方でした。
塗装と防錆処理を提案した業者
現状では、すぐに全交換する必要はないという意見です。
サビの状態を確認し、塗装や防錆処理で維持する方法を提案されました。
この経験から、見積もりは単なる金額の違いではないと分かりました。
業者さんによって、建物の見方、優先する安全性、将来を見据えた工事方法が異なります。
一番安い業者が一番得とは限らない
修繕費はできるだけ抑えたいものです。
私自身も大家になった頃は、安い業者さんの方が得だと考えていました。
しかし、見積金額が安い場合には、理由を確認する必要があります。
- 工事を行う範囲が狭い
- 使用する材料が異なる
- 下地処理など一部の工程が含まれていない
- 廃材処分や足場の費用が別になっている
- 保証や工事後の対応内容が異なる
必要な工事が含まれていなければ、後から追加費用が発生する可能性があります。
金額だけを見るのではなく、どこまで含まれた見積もりなのかを確認することが大切です。
高い見積もりにも理由がある
高額な見積もりだからといって、業者さんが不当に高く請求しているとは限りません。
安全性を優先し、将来の再工事を減らすために、広い範囲の工事を提案していることもあります。
階段の全交換を提案した業者さんも、安全性を重視した結果だったのだと思います。
最終的にその提案を採用しなかったとしても、専門家がどのような危険を考えているのかを知ることができました。
高いか安いかだけで判断せず、その金額になった理由を聞くことが重要です。
相見積もりは値切るためだけではない
相見積もりというと、安い業者を探したり、値引きをお願いしたりするためのものだと思われがちです。
しかし、本来の目的は、
「どの工事が本当に必要なのか」
を判断するために、複数の専門家の意見を聞くことです。
比較するのは価格だけではありません。
- 現在どのような問題が起きているか
- 工事を急ぐ必要があるか
- 補修で対応できるか
- 交換が必要か
- 工事後にどの程度維持できるか
- 再点検が必要な時期
複数の説明を聞くことで、大家自身も工事内容を理解しやすくなります。
見積書で比較したい項目
複数の見積書を比較するときは、合計金額だけでなく、次の項目を確認します。
- 工事の対象範囲
- 使用する材料と数量
- 下地処理や撤去作業の有無
- 足場や養生の費用
- 廃材処分費
- 諸経費と消費税
- 工事期間
- 保証内容
- 追加工事が発生する条件
「工事一式」とだけ書かれている場合は、何が含まれているのかを確認します。
見積書の項目名が業者さんによって異なるときは、同じ条件で比較できているかを聞くことも大切です。
業者選びで確認したいこと
見積金額と工事内容を確認したうえで、実際に工事を任せられる業者さんかを考えます。
- 現地を確認してから見積もりを作っているか
- 工事が必要な理由を説明できるか
- 質問に分かりやすく答えてくれるか
- 過去の施工例を確認できるか
- 工事中の連絡方法が決まっているか
- 工事後の不具合に対応してもらえるか
安いだけで説明が不十分な業者さんへ依頼するのは不安があります。
一方で、高い見積もりを出した業者さんへ無条件に依頼すれば安心というわけでもありません。
価格、内容、安全性、説明、工事後の対応を含めて判断します。
緊急修繕と高額工事を分けて考える
すべての修繕で、時間をかけて相見積もりを取れるわけではありません。
水漏れ、停電、給湯器の故障など、入居者様の生活や安全に関わる問題は、早急な対応が必要です。
一方、外壁塗装、屋根工事、階段交換などの高額工事は、状態を確認しながら複数社へ相談できる場合があります。
私は現在、緊急性と金額を分けて考えるようにしています。
- 生活や安全に直結するものは対応を急ぐ
- 高額工事は可能な範囲で複数社へ相談する
- 応急処置で時間を確保できるか確認する
- 先延ばしによって危険が増えないか確認する
工事を決める前のチェックリスト
高額な修繕工事を決める前に、次の点を確認します。
- 今すぐ必要な工事か
- 放置した場合、どのような危険があるか
- 補修と交換の両方を検討したか
- 複数の業者へ相談したか
- 見積もりの工事範囲は同じか
- 材料や保証内容を確認したか
- 追加費用が発生する条件を聞いたか
- 入居者様の生活や安全へ影響しないか
- 工事費を支払っても資金繰りに無理がないか
すべての業者さんから同じ答えが出るとは限りません。
意見が異なるからこそ、それぞれの理由を聞き、大家自身が納得して決めることが大切です。
まとめ|相見積もりは必要な工事を見極めるために行う
相見積もりは、一番安い業者さんを探すためだけのものではありません。
複数の専門家から意見を聞き、本当に必要な工事と適切な方法を見極めるための手段です。
私自身、約450万円の階段交換見積をきっかけに、次のことを学びました。
- 業者によって診断や工事方法が異なる
- 安い見積もりには安い理由がある
- 高い見積もりにも安全面などの理由がある
- 価格だけでなく工事範囲や材料を比較する
- 納得できる説明を受けてから工事を決める
修繕工事は、建物と入居者様の安全に関わります。
比較する手間を惜しまず、価格と内容の両方を確認することが、後悔の少ない修繕につながると感じています。