アパート経営をしていると、
「空室が出たらどうしよう」
「どうすれば早く入居者様が決まるだろう」
と考えることが多くなります。
私自身も大家になった頃は、空室が発生するたびに焦り、家賃や設備、募集方法ばかり気にしていました。
しかし10年以上大家業を続けて感じるのは、本当に見るべきなのは空室の数だけではないということです。
空室が発生してから対策を始める前に、現在の入居者様の退去を減らすことが重要です。
今回は、退去によって発生する費用、退去の予兆、管理会社との情報共有について、実体験を交えてお伝えします。
空室対策ばかり考えていた頃
大家になりたての頃は、空室が出るたびに、
「家賃を下げた方がよいのだろうか」
「新しい設備を付けるべきだろうか」
と考えていました。
Wi-Fi、宅配ボックス、モニター付きインターホンなど、目に見える対策へ意識が向いていたのです。
もちろん、新しい入居者様を募集するための空室対策も大切です。
しかし、退去そのものを減らせれば、空室募集が必要になる回数も減ります。
そのため現在は、空室を埋めることと同じくらい、退去を防ぐことを意識しています。
退去が発生すると多くの費用がかかる
退去は、家賃収入が一時的に止まるだけの問題ではありません。
次の入居者様を迎えるまでに、さまざまな費用と作業が発生します。
入居者募集の費用
新しい入居者様を探すために、広告料や仲介に関する費用が必要になることがあります。
競争が激しい地域では、募集条件や広告料の見直しを求められる場合もあります。
原状回復と修繕の費用
退去後には、室内清掃や設備点検が必要です。
部屋の状態によっては、クロス、床、水回り、エアコンなどの修繕が発生します。
現地を確認するまで、必要な工事の内容や金額が分からないこともあります。
空室期間中の家賃損失
退去日から次の入居開始日まで、家賃収入は入りません。
その間もローン返済、管理費、共用部分の費用などは続きます。
そのため、長く住んでいただくことは、安定した経営につながります。
防げない退去と改善できる退去がある
退去理由には、大家側では防げないものがあります。
- 転勤
- 結婚や同居
- 就職や転職
- 実家へ戻る
- 住宅の購入
こうした生活上の変化による退去を、大家が止めることはできません。
一方で、次のような理由は改善できる可能性があります。
- 設備の不具合が直らない
- 修繕対応が遅い
- 共用部分の管理状態が悪い
- 騒音などの相談へ対応してもらえない
- 小さな不便や不満が積み重なっている
すべての退去を防ぐのではなく、改善できた可能性のある退去を減らすことが大切です。
退去は突然に見えて予兆があることもある
大家へ届く退去連絡は突然に見えます。
しかし、入居者様は連絡したその日に、初めて退去を考えたとは限りません。
日々の暮らしの中で、不便や不満が少しずつ積み重なっている場合があります。
例えば、次のような連絡には注意が必要です。
- 同じ設備について何度も修繕依頼がある
- 以前伝えた不具合が解決していない
- 騒音や共用部分について相談が続いている
- 管理会社からの回答を待っている
- 修繕の予定が決まらない
これらの連絡が必ず退去につながるわけではありません。
しかし、小さな問題を放置しないことが、退去を防ぐ第一歩になります。
修繕を見送ったことが退去につながった経験
過去には、入居者様から設備の不具合について相談があったものの、管理会社さんが修理を見送っていたことがありました。
大家側には、問題の詳しい状況や、対応を見送ったことが十分に伝わっていませんでした。
その後、結果的に退去につながってしまいました。
退去理由を確認したことで、修繕対応が関係していた可能性を知りました。
もし早い段階で大家にも情報が共有されていれば、修理するかどうかを判断できたかもしれません。
この経験から、私は修繕依頼の内容と対応状況を、管理会社任せにせず確認するようになりました。
管理会社との情報共有が重要
大家が入居者様と直接やり取りしていない場合、退去の予兆を知るには管理会社との連携が欠かせません。
管理会社には、入居者様から次のような情報が届きます。
- 修繕依頼
- 設備の不具合
- 騒音などの相談
- 共用部分への要望
- 近隣関係の問題
管理会社が対応しているから大丈夫だと思い込まず、重要な相談があったときは大家にも共有してもらうようにします。
特に確認したいのは、次の点です。
- どの部屋から、どのような相談があったか
- いつ連絡があったか
- 現地確認を行ったか
- 修理や対応の予定は決まっているか
- 入居者様へ回答済みか
すぐに解決できない場合でも、対応状況を入居者様へ伝えてもらうことが大切です。
退去理由は次の改善に使う
以前の私は、退去連絡を受けると、次の募集のことばかり考えていました。
現在は、まず退去理由を確認します。
退去理由を知ることで、次のような判断に役立てられます。
- 設備改善の優先順位
- 修繕対応の見直し
- 管理会社との情報共有方法
- 家賃や募集条件の確認
- 次の入居者様へ説明すべきこと
「一身上の都合」とだけ聞いて終わらせず、可能な範囲で背景を確認してもらいます。
ただし、入居者様が伝えたくない事情まで無理に聞く必要はありません。
改善に使える情報があるかを確認することが目的です。
小さな不便を放置しない
設備が完全に壊れていなくても、毎日使いにくい部分はあります。
私の物件では、ハンドル式の水栓をレバー式に交換したところ、入居者様に喜んでいただいたことがあります。
豪華な設備を増やすよりも、毎日の小さな不便を解消する方が満足度につながることもあります。
修繕や改善を考えるときは、次の点を確認します。
- 毎日使う場所か
- 安全性に関わるか
- 不便が繰り返し発生しているか
- ほかの部屋でも同じ問題が起こる可能性があるか
- 修理と交換のどちらが適切か
退去を減らすためのチェックリスト
退去対策として、私は次の点を確認するようにしています。
- 修繕依頼が未対応のまま残っていないか
- 同じ入居者様から相談が繰り返されていないか
- 管理会社から重要な情報が共有されているか
- 共用部分が清潔に保たれているか
- 設備の小さな故障が放置されていないか
- 退去理由を記録しているか
- 改善できる退去理由が繰り返されていないか
一度に大きな工事をする必要はありません。
小さな問題を確認し、できるものから改善していくことが大切です。
退去連絡が入ったときに確認すること
退去が決まった場合は、慌てて家賃を下げる前に状況を整理します。
- 退去日と解約日
- 可能な範囲での退去理由
- 室内確認ができる時期
- 修繕や清掃が必要な範囲
- 募集を開始できる時期
- 現在の家賃と周辺相場
- 問い合わせや内見の状況
退去を防げなかった場合でも、確認した情報を次の募集と管理へ生かします。
まとめ|空室になってからではなく退去前から考える
退去を完全になくすことはできません。
転勤や結婚など、大家側では防げない理由もあります。
しかし、修繕の遅れや小さな不満の積み重ねなど、改善できる可能性がある退去もあります。
だからこそ、空室になってから募集対策を始めるだけでなく、入居中から次の点を意識することが大切です。
- 修繕依頼を放置しない
- 管理会社と情報を共有する
- 退去の予兆を決めつけずに確認する
- 退去理由を次の改善へ生かす
- 入居者様の小さな不便へ目を向ける
空室対策より先に退去対策を考える。
それが、募集費用や原状回復費用を減らし、安定した賃貸経営につながると感じています。